空き家の固定資産税が上がるのは「勧告」から。特定空家と管理不全空家の境目とは

前回は、空き家を持ち続けるだけで年に約23万〜39万円かかるという維持費の試算をお伝えしました。今回はその中でも、多くの人が気にしている「固定資産税」の話です。

「空き家を放っておくと、固定資産税が6倍になる」。ニュースや広告で、一度は目にしたことがあるかもしれません。実家が空き家になっている人にとっては、ドキッとする言葉です。

ただ、この「6倍」には少し誤解があります。また、税金が上がるのは「空き家だから」ではなく、ある手続きを経たときです。この記事では、国の資料をもとに、次の3つを整理します。

・固定資産税が上がる仕組みと、実際に何倍になるのか

・「特定空家」と「管理不全空家」は、どんな状態で指定されるのか

・全国でどれくらいの空き家が対象になっているのか

税金が上がるのは「勧告」を受けたとき

家が建っている土地には「住宅用地特例」という税の優遇があります。200㎡以下の部分は、固定資産税の計算のもとになる金額(課税標準)が評価額の6分の1に、都市計画税は3分の1に下がります。

この優遇は、空き家になったからといってすぐに外れるわけではありません。外れるのは、市区町村から「特定空家」または「管理不全空家」として「勧告」を受けたときです。

順番は次のとおりです。まず市区町村が「指導」をして、改善を促します。それでも改善されないと「勧告」になり、ここで住宅用地特例の対象から外れます。判定は毎年1月1日時点なので、1月1日に勧告を受けた状態だと、その年度から税額が上がります。

逆にいえば、指導の段階で手を打てば、税の優遇はそのままです。勧告を受けたあとでも、求められた対応をすれば勧告は撤回され、条件を満たせば特例は元に戻ります。

「6倍」ではなく、土地の固定資産税は約4.2倍

では、特例が外れると税金はいくらになるのでしょうか。土地の評価額が1,000万円、200㎡以下の住宅用地として試算しました。

土地の固定資産税

・特例あり:固定資産税 約2.3万円+都市計画税 約1.0万円=年 約3.3万円

・勧告後:固定資産税 約9.8万円+都市計画税 約2.1万円=年 約11.9万円

固定資産税は約4.2倍、都市計画税は約2.1倍、合わせて約3.6倍です。差は年に約8.6万円、10年続けば約86万円になります。

「6倍」にならないのは、住宅以外の土地には、課税標準を評価額の70%までに抑える仕組みがあるためです。6分の1が外れても、上限は70%なので、6×0.7=約4.2倍になります。静岡市も、特例が外れると土地の税額は約4倍になると案内しています。

なお、200㎡を超える部分はもともと3分の1なので、上がり方は約2.1倍にとどまります。東京23区は上限が65%のため、約3.9倍です。

「6倍ではないなら安心」というわけではありません。もともとの税額が数万円でも、4倍になれば負担感は大きく変わります。

管理不全空家は「特定空家の一歩手前」

勧告の対象になるのは、2種類の空き家です。

「特定空家」は、2015年から制度がある、状態がかなり悪い空き家です。倒壊などで著しく危険、著しく不衛生、景観を大きく損なっている、周りの生活環境に悪い影響がある、のいずれかにあたるものです。

「管理不全空家」は、2023年12月の法改正で新しくできた区分です。このまま放置すれば特定空家になるおそれがある空き家を指します。

管理不全空家は一歩手前

大きな違いは、行政がとれる措置です。特定空家は、勧告のあと「命令」「代執行(行政による解体など)」まで進むことがあります。命令に違反すると50万円以下の過料、代執行の費用は所有者に請求されます。管理不全空家には命令や代執行の規定はありませんが、勧告を受けると税の優遇が外れる点は同じです。

どんな状態だと指定される?

国土交通省のガイドラインには、判断の参考になる状態の例が載っています。管理不全空家の例を、いくつか挙げます。

・屋根の変形、瓦や外壁のはがれ

・柱や土台の腐り、シロアリの被害、雨水が入った跡

・雨どい、ベランダの支えの傷み

・窓や戸の破損

・庭木の枝のはみ出し、ごみの散乱、動物の棲みつき

・擁壁(土留めの壁)のひび割れ、水抜き穴の詰まり

一方、特定空家の例は「倒壊のおそれがあるほどの著しい傾き」など、より深刻な状態です。建物の傾きは20分の1を超えるのが目安とされています。

ただし、当てはまれば自動的に指定されるわけではありません。市区町村は、周りに家や道路があるか、被害がどれくらい及びそうかなどを踏まえて、総合的に判断します。人通りの多い道沿いや住宅が密集した場所、雪や台風の影響を受けやすい地域では、早めに対応を求められやすいとされています。

また、勧告がなくても、屋根や外壁が大きく壊れていて人が住めない状態の家は、そもそも「住宅」とみなされず、特例が使えない場合があります。

勧告は1年で978件。管理不全空家も増えている

実際に、どれくらいの空き家が勧告を受けているのでしょうか。国土交通省と総務省の調査(2025年3月31日時点)を見てみます。

勧告件数の推移

特定空家への勧告は、2015年度の59件から、2024年度は600件と約10倍に増えました。これに、新しく始まった管理不全空家への勧告378件が加わり、2024年度だけで合わせて978件の空き家が住宅用地特例の対象から外れたことになります。

管理不全空家への指導も、2023年度(12月から約4か月)の666件から、2024年度は2,545件に増えています。制度が始まったばかりで、自治体の取り組みはこれから広がっていくと考えられます。

全国の空き家の数から見れば、まだ一部です。ただ、市区町村は空き家の実態調査や近所からの相談をきっかけに状況を把握しています。遠方に住んでいて家の状態を見ていない、という人ほど、気づいたときには指導が届いていた、ということになりやすいかもしれません。

まずは家の状態を確かめることから

指導の段階で対処しましょう

税の優遇が外れるのは「勧告」からで、その前には必ず「指導」があります。指導の段階であれば、修繕や草木の手入れで十分に間に合います。今日からできることは、次のとおりです。

・年に一度は家を見に行くか、近所の人や管理サービスに様子を見てもらう

・上図のチェック項目で、屋根・外壁・庭木・窓の状態を確かめる

・市区町村から届いた郵便は、すぐに開けて内容を確認する

・家族で「住む・貸す・売る・解体する」のどれにするか、話し合う日を決める

どれが正解かは、家族の事情や家の場所によって違います。ただ、データが示しているのは、決めないまま時間が過ぎると、家は少しずつ傷み、税金や維持費の負担も増えやすいということです。修繕して活かすのか、早めに手放すのか。家の状態が良いうちのほうが、選べる道は多く残ります。

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■出典

・国土交通省・総務省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について(令和7年3月31日時点調査)」2025年12月25日公表

 https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000257.html

・国土交通省「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」

 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/002019841.pdf

・国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について」

 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000138.html

・国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」

 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/002019834.pdf

・東京都主税局「『特定空家等』または『管理不全空家等』に該当すると土地に対する固定資産税・都市計画税の税額が高くなる場合があります」

 https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/real_estate/kotei_tosi/tokuteiakiya

・静岡市「特定空家・管理不全空家と住宅用地特例」

 https://www.city.shizuoka.lg.jp/s7345/s013021.html

・神戸市「空き家の固定資産税(住宅用地特例)」

 https://www.city.kobe.lg.jp/a03858/kurashi/tax/kotei/akiya.html

※税額は、土地の評価額1,000万円、全体が200㎡以下の小規模住宅用地、固定資産税率1.4%・都市計画税率0.3%と仮定した試算です。勧告後の課税標準は、住宅用地以外の宅地の上限(評価額の70%)としました。実際の税額は、負担調整措置、自治体の税率や軽減措置、土地の広さによって変わります。建物にかかる固定資産税は含みません。ご自身の納税通知書の評価額に置き換えてご確認ください。

※勧告件数は年度(4月〜翌3月)ごとの件数です。2024年度=令和6年度です。管理不全空家への措置は、改正法の施行日(2023年12月13日)以降の件数です。

※特定空家・管理不全空家に当たるかどうかは、市区町村がガイドラインなどを参考に判断します。基準は自治体ごとに定められている場合があります。空き家の状態や指導・勧告については家のある市区町村の空き家担当窓口へ、税額については税務担当(東京23区は都税事務所)へご相談ください。

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