空き家に火災保険は必要?「住まなくなると保険料2〜3倍」の理由と、見落としがちな3つの落とし穴

前回は、空き家を持ち続けると年に約23万〜39万円の維持費がかかる、という試算をお伝えしました。その内訳のひとつが「火災保険」です。

親が施設に入った、亡くなった。実家に誰も住まなくなったあとも、火災保険は親が入っていた契約のまま、という家は少なくありません。「誰も住んでいないし、火事なんて起きないだろう」と、解約を考える人もいるかもしれません。

ところが、火災保険の世界では「人が住んでいる家」と「住む予定のない空き家」は、別の種類の建物として扱われます。保険料も、付けられる補償も変わります。

この記事では、公的なデータと法律をもとに、次の3つを整理します。

・空き家が抱える火災・損傷のリスク

・「住宅物件」と「一般物件」で何が変わるのか

・火災保険だけではカバーしきれない落とし穴

空き家の火災、約1割は「放火」か「放火の疑い」

まず、空き家に火災保険がいらないのかを考えるために、火災の現状を見てみます。

総務省消防庁の「令和7年版 消防白書」によると、2024年の放火による火災は2,377件。「放火の疑い」を加えると3,904件で、全火災の10.5%を占めています。東京消防庁の管内では、2025年の出火原因の1位が「放火(疑いを含む)」でした。

人の出入りがなく、夜も明かりがつかない家は、こうした被害の心配がどうしても残ります。

建物そのものの状態も気になります。国土交通省の「令和6年空き家所有者実態調査」では、相続した空き家の7割超(73.2%)が1980年以前の建築でした。腐朽・破損や構造上の不具合がある家は、合わせて71.8%にのぼります。

古く傷んだ家ほど、台風で屋根が飛んだり、雪で一部が壊れたりしやすくなります。住んでいないから保険はいらない、とは言い切れないのが現状です。

人の目が届かないことで生まれるリスク

住まなくなると「住宅物件」から「一般物件」へ

火災保険は、建物の使い方によって大きく2つに分かれます。

・住宅物件:人が住むための建物(一戸建て、マンションなど)

・一般物件:店舗や事務所など、住まい以外に使う建物

住む予定のない空き家は、もとは住宅でも、契約上は「一般物件」として扱うのが一般的です。保険の種類も、住宅火災保険・住宅総合保険から、普通火災保険・店舗総合保険などに変わります。

一方で、転勤中で数年後に戻る予定がある家や、定期的に通って管理している家は、住宅物件として扱ってもらえる場合があります。どちらになるかは保険会社と家の状態しだいなので、「うちはどちらか」を一度確認することが出発点です。

住宅物件と一般物件の違い

保険料は「約2〜3倍」になることも

一般物件になると、保険料は上がりやすくなります。

保険料について公的な比較データはありませんが、FP(ファイナンシャルプランナー)の解説では、住宅物件に比べて「約2倍」「2〜3倍」になるという目安が示されています。年3万円だった実家の保険料が、空き家になって更新したら年9万円と言われた、という事例も紹介されています。

仮に、住宅物件で年3万円だった家が一般物件になったとすると、試算は次のとおりです。

・2倍の場合:年6万円(10年で60万円)

・3倍の場合:年9万円(10年で90万円)

ご自身の家に当てはめるなら「いまの年間保険料 × 2〜3 × 持ち続ける年数」が、ひとつの目安になります。実際の金額は、地域・構造・築年数・補償内容で大きく変わるので、見積もりで確かめてください。

また、空き家は火災のリスクが高いとみなされやすく、引き受けを制限する保険会社もあります。傷みが激しい家は、加入自体を断られることもあります。

保険料の違い

地震保険は、原則として付けられない

もうひとつ大きなちがいが、地震保険です。

地震による火災や倒壊、津波による損害は、ふつうの火災保険では補償されません。備えるには、火災保険とセットで地震保険に入る必要があります。

ところが財務省の資料によると、地震保険の対象は「居住のために使用する建物」です。店舗や事務所だけの建物は対象外で、空き家や別荘は「常時、居住のために使用する状態」であれば対象、とされています。

つまり、住む予定のない一般物件の空き家は、原則として地震保険に入れません。地震の多い地域にある実家ほど、この点は知っておきたいところです。

火災保険だけでは足りない、3つの落とし穴


空き家の保険では、火災保険の「外側」にも注意が必要です。

1つ目は、隣の家の火事で燃えても、原則として賠償してもらえないことです。「失火責任法」という法律により、火元の人に重大な過失がなければ、損害賠償の責任は問われません。自分の家の損害は、自分の火災保険で備えるのが基本になります。

2つ目は、自分の家が原因で他人に損害を与えたときの責任です。民法717条(工作物責任)では、建物や塀に欠陥があって他人に損害を与えた場合、所有者は過失がなくても賠償責任を負うことがあります。強風で瓦が飛んで車を傷つけた、ブロック塀が倒れて通行人がけがをした、といったケースです。

住んでいる家なら「個人賠償責任特約」で備えられることが多いのですが、空き家では「施設賠償責任保険」など別の保険が必要になる場合があります。

3つ目は、住まなくなったことを保険会社に伝えないままにしておくことです。保険料が上がるからと住宅物件のまま放置すると、契約の内容によっては、保険金が支払われなかったり、契約を解除されたりするおそれがあります。

所有者が知っておきたいこと

まずは「いまの契約の確認から」


空き家の火災保険は、解約すれば安く済む、というものではありません。燃えたときの片付け費用や、近所への賠償まで考えると、持ち続けるあいだは備えておくのが安心です。

一方で、保険料の上昇は「住まない家を持ち続けるコスト」のひとつでもあります。前回の維持費と合わせると、何も決めずに過ごす1年ごとに、少なくない出費が積み重なっていきます。

活かすか、貸すか、売るか。どれが正解かは家庭によって違います。だからこそ、まずは次のことから始めてみてください。

・実家の火災保険証券を見つけ、契約者・補償内容・満期日を確認する

・保険会社や代理店に「空き家になった(なりそう)」と伝え、住宅物件のままでよいか相談する

・瓦や塀など、他人に迷惑をかけそうな傷みがないか点検する

・保険料の見積もりをもとに「あと何年持つか」を家族で話してみる

保険を見直すタイミングは、家のこれからを考えるよいきっかけにもなります。
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■出典

・総務省消防庁「令和7年版 消防白書」第1章第1節 4.出火原因(令和6年中の火災)

 https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r7/chapter1/section1/para1/69229.html

・東京消防庁「消防行政の概要」令和7年中の東京消防庁管内の災害動向等

 https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/content/000113002.pdf

・国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査 結果のポイント」(2025年8月29日公表)

 https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000233.html

・財務省「地震保険制度」資料

 https://www.mof.go.jp/policy/financial_system/earthquake_insurance/material2-4.pdf

・価格.com保険「空き家に火災保険は必要?」(CFP監修)

 https://hoken.kakaku.com/kasai/article/1706a.html

・幻冬舎ゴールドオンライン(空き家の火災保険に関する解説)

 https://gentosha-go.com/articles/-/8452

・ファイナンシャルフィールド「親が“老人ホーム”に入り、実家が「空き家」に…火災保険料(略)」(FP執筆)

 https://financial-field.com/insurance/entry-506028

・e-Gov法令検索「失火ノ責任ニ関スル法律」「民法」第717条「保険法」第29条

※「放火」「放火の疑い」の件数は令和6年(2024年)中の全国の火災。

※「腐朽・破損等あり」71.8%は、相続空き家のうち「構造上の不具合あり」21.2%、「全体的な腐朽・破損あり」3.5%、「部分的な腐朽・破損あり」47.1%の合計。1980年以前の建築73.2%は「1950年以前」20.4%、「1951〜1970年」26.4%、「1971〜1980年」26.4%の合計。

※保険料の「約2〜3倍」は民間の解説で示される目安で、公的な統計ではありません。年3万円の例は前提を置いた試算です。実際の保険料・物件区分・引受条件は、保険会社と建物の状態によって異なります。

※地震保険の対象は、財務省資料の記載(空き家や別荘は“常時、居住のために使用する状態”であれば対象)にもとづきます。

※賠償責任や通知義務の扱いは、契約内容や個別の事情で変わります。具体的には、加入中の保険会社・代理店、必要に応じて弁護士にご相談ください。

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