「売却」「賃貸」「解体」「維持」どれが正解?我が家の最適解がわかる判断フローチャート

前回は、空き家を持ち続けるだけで、平均的な家なら年に約23万〜39万円かかるという試算をお伝えしました。

すると次に浮かぶのは「じゃあ、うちはどうすればいいの?」という疑問だと思います。売るか、貸すか、壊すか、このまま持つか。親が建てた家だからこそ、簡単には決められません。

この記事では、国土交通省の最新調査をもとに、空き家の持ち主が実際にどう考えているかを見たうえで、4つの質問で「我が家の候補」を絞るフローチャートを紹介します。最後に、それぞれの選択肢のお金と注意点も比べます。

今後5年「空き家のまま持つ」が31.7%で最多


国土交通省が2025年8月に公表した「令和6年空き家所有者実態調査」では、今も空き家になっている家について、今後5年ほどの使い道を聞いています。

いちばん多かったのは「空き家のまま所有しておく(物置としての所有を含む)」で31.7%。次いで「売却する」19.5%、「別荘・セカンドハウスとして使う」19.1%、「取り壊してさら地にする」14.1%でした。「賃貸する」は5.1%にとどまります。

空き家のまま利用が最多

空き家のまま持つ理由(複数回答)は、次のとおりです。
・物置として必要:55.8%
・解体費用をかけたくない:47.3%
・住宅が古い:37.0%
・さら地にしても使い道がない:34.8%
・取り壊すと固定資産税が高くなる:28.2%

どれも、もっともな理由です。ただ、裏を返すと「どれが正解か分からないので、ひとまず今のまま」という家庭も多いのかもしれません。そこで、判断の順番を整理してみます。

4つの質問で「我が家の候補」が絞れる


次のフローチャートを、上から順にたどってみてください。

決断へのフローチャート

 Q1:5年以内に、自分や家族が住む・使う予定がありますか?具体的な予定があるなら「維持」が候補です。ただし、「いつか使うかも」は予定に入れないのがポイントです。誰が、いつ使うのかを家族で決めておきましょう。
Q2:建物はそのまま使える状態ですか?雨漏り、柱や床の傾き、床の抜けなど、構造に関わる傷みがないかを確認します。調査では、空き家の約2割(19.6%)に構造上の不具合が出ていました。
Q3:賃貸の需要がある立地で、修繕と管理の手間をかけられますか?駅に近いなど借り手が見込める場所で、貸す前の修繕や入居後の対応を引き受けられるなら「賃貸」。難しければ、古家付きのまま「売却」が候補になります。
Q4:土地として売れる・使える立地ですか?建物が傷んでいても、土地に需要があれば「解体して売る」道があります。解体せずに、買主に解体してもらう条件で売る方法もあります。土地の需要も見込みにくい場合は、国の「相続土地国庫帰属制度」や、自治体・専門家への相談を検討します。

どの選択肢にも、お金と落とし穴がある

フローチャートで候補が見えたら、次はお金と注意点を確かめます。

金銭と注意点

特に知っておきたいのは、次の3点です。 1つ目は、「賃貸」と「売却時の特例」が両立しにくいことです。親から相続した家を売るとき、条件を満たせば売却益(譲渡所得)から最大3,000万円を差し引ける特例があります。ただし、相続してから売るまでの間に人に貸していると対象外です。「しばらく貸して、そのうち売る」と考えている場合は、先に確認しておきましょう。 この特例には、ほかにも条件があります。1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家であること、亡くなった方が一人で住んでいたこと、売却額が1億円以下であることなどです。期限は「相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」で、かつ2027年12月31日までの売却が対象です。相続人が3人以上の場合、1人あたりの上限は2,000万円になります。 2つ目は、「解体」すると土地の固定資産税が上がりやすいことです。住宅が建っている土地は、200㎡までの部分の課税標準が6分の1になるなどの軽減を受けています。更地にするとこの軽減がなくなります。解体費も、木造なら1坪あたり3万〜5万円が民間の目安です。平均的な一戸建て(約38坪)に当てはめると、約115万〜191万円になります。塀や庭木、家財の処分は別にかかることが多いので、見積もりで確認してください。 3つ目は、「維持」を選んでも、放置はできないことです。2023年12月施行の改正空家法で、放置すると危険な状態になるおそれのある「管理不全空家」も、市区町村から勧告を受けると住宅用地の軽減が外れるようになりました。

決めずに置くと、傷みが進み、空き家のままになりやすい

「とりあえず持っておく」こと自体は悪いことではありません。ただ、データを見ると、決めないまま時間がたつことにもコストがあると分かります。

決めないリスクもあります。

 管理の頻度別に見ると、月に1回以上手入れしている空き家では構造上の不具合が15〜18%程度なのに対し、年に1〜数回では24.3%、数年に1回では33.3%に上がります。傷みが進むと、売るにも貸すにも不利になりやすくなります。 また、相続した空き家のうち、相続前に親との話し合いなどの対策をしていた家庭は23.0%でした。対策をしていた家庭では、今後も「空き家のまま持つ」意向が23.4%だったのに対し、対策をしていない家庭では35.3%でした。1年あまりのうちに空き家でなくなった割合も、対策ありが21.3%、なしが13.3%と差があります。 さらに、管理不全空家の敷地が固定資産税の軽減対象から外れる仕組みを「知らない」と答えた所有者は55.1%でした。制度を知らないまま時間が過ぎ、気づいたときには選べる道が減っている、ということも起こりえます。 どれが正解かは、家の状態や立地、家族の事情によって変わります。大切なのは、「決めない」ことも一つの選択で、その分の費用と手間がかかると知っておくことです。

まずは「家族で4つの質問」から

今日からできることを4つ挙げます。 ・フローチャートの4つの質問を、家族や兄弟姉妹と一緒にたどってみる・家の傷み(雨漏り、傾き、床のきしみ)を写真に残し、建てられた年を登記事項証明書などで確認する・相続した家なら、相続した日と建築年をメモし、3,000万円控除の期限に間に合うかを税務署や税理士に確認する・売る・貸す・壊すの候補が出たら、不動産会社の査定と解体の見積もりを取り、金額を並べて比べる 数字を並べてみると、迷っていた理由が意外とはっきりすることがあります。

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■出典・国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査 調査結果」(2025年8月公表)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001907478.pdf・国土交通省 報道発表「相続空き家の相続前の対策の有無などを新たに調査しました!」(2025年8月29日)https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001907434.pdf・国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(タックスアンサーNo.3306)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2025/kakikata/05/tokurei.htm・富山市「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」リーフレット(適用要件)https://www.city.toyama.lg.jp/_res/projects/default_project/page/001/006/661/leaflet_akiya_koujo.pdf・千葉市「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除のご案内」https://www.city.chiba.jp/toshi/toshi/anzen/documents/3000.pdf・熊本県「空家等対策の推進に関する特別措置法について」(改正空家法の概要、2023年12月13日施行)https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/117/192847.html・さいたま市「土地の課税標準の特例(住宅用地)」https://www.city.saitama.lg.jp/001/153/004/002/002/009/p007072.html・法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」https://www.moj.go.jp/content/001376268.pdf・解体費の目安:民間の不動産・解体関連サイトの公表情報(木造1坪あたり3万〜5万円)https://e-estate.jp/media/estate-sale/blog/13204/ ※「今後の利用意向」は、令和6年12月1日時点でも空き家だった住宅について、今後5年程度の意向を聞いたものです(N=約103万世帯、推計値)。※「相続前の対策」は、被相続人との話し合い、遺言の作成支援、後見制度や家族信託の活用などを指します。※解体費は、民間の目安(木造1坪あたり3万〜5万円)に総務省「住宅・土地統計調査」の一戸建て平均延べ面積126.32㎡(約38坪、1坪=3.30579㎡)を掛けた試算です。ご自身の家の坪数に置き換えてください(例:30坪なら約90万〜150万円)。アスベスト調査、塀・庭木の撤去、家財処分などは含みません。自治体によっては解体の補助金があります。※維持費(年約23万〜39万円)は本シリーズ②の試算です。※3,000万円控除は、被相続人が一人で住んでいた1981年5月31日以前建築の家屋(区分所有建物を除く)であることなど、多くの条件があります。家屋付きで売る場合は耐震基準への適合が必要です。2024年1月1日以降の売却は、売った翌年2月15日までに買主が耐震改修や解体をした場合も対象になります。適用の可否は税務署や税理士にご確認ください。※相続土地国庫帰属制度は、建物がある土地は申請できません。審査手数料(1筆14,000円)と、10年分の管理費相当の負担金(宅地は原則20万円、一部の市街地は面積に応じて算定)がかかります。相談先は土地の所在地を管轄する法務局です。※管理不全空家の判断基準や勧告の運用は市区町村ごとに異なります。

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