国土の半分は豪雪地帯。冬の空き家で起きる倒壊・落雪トラブルと、雪が降る前に決めること

前回は、空き家を持ち続けるだけで年に数十万円の維持費がかかることを試算しました。今回は、そのお金とは別に、雪国の空き家だけが抱えるリスクの話です。

「実家は雪の多い地域にあって、冬はなかなか見に行けない」。そんな声をよく聞きます。夏なら車で様子を見に行けても、冬は道が悪く、行けたとしても屋根の雪をどうするかで悩みます。人が住んでいれば毎日雪かきをしますが、空き家には雪を下ろす人がいません。

この記事では雪国の空き家で何が起きやすいのか、放置すると法律や税金の面でどうなるのか、そして雪が降る前に何を決めておけばよいのかを整理します。

国土の約半分は「豪雪地帯」。雪は一部の地域だけの話ではない。

豪雪地帯と指定されている面積

国土交通省によると、豪雪地帯対策特別措置法で「豪雪地帯」に指定されている地域は、国土面積の50.8%にあたります。市町村の数では532、全国の約3割です。北海道や東北、北陸だけでなく、関東・中部・近畿・中国地方の一部も含まれ、24道府県にまたがっています。

人口で見ると約14.5%ですが、面積では約半分。つまり「人は少ないけれど、家は広い範囲に点在している」地域です。都市部に住む人が、雪国にある実家を相続するケースは珍しくありません。

雪の死者は多い冬で100人超。8割以上が除雪作業中

除雪作業は疲労も蓄積されるため危険も伴う

総務省消防庁の集計では、雪による死者は多い冬で100人を超えます。昨冬(2025年11月〜2026年3月)は速報値で72人。このうち60人が屋根の雪下ろしなどの除雪作業中、62人が65歳以上でした。

屋根の雪がやっかいなのは、見た目では重さが分からないことです。防災科学技術研究所の資料によると、降ったばかりの雪の密度は水の10分の1以下ですが、時間がたつと押し固められて重くなり、雪解けの時期には水の半分ほどの密度になります。同じ積雪の深さでも、時期によって重さが何倍も変わります。

防災科研が公開している「雪おろシグナル」では、1㎡あたり300kg以上を注意(雪下ろしの目安とされる積雪1mに相当)、700kg以上を建物の倒壊事例が見られる危険な重さとして色分けしています。

実際、2025年1月には青森県の10市町村で災害救助法が適用され、自力で除雪できない世帯の屋根雪を行政が下ろす事態になりました。住んでいる家でさえこうなのですから、誰も住んでいない家はなおさらです。

空き家が危ないのは「人の目」と「手」がないから

距離と管理の関係性

国土交通省の「令和6年空き家所有者実態調査」を見ると、所有者の約4軒に1軒(23.4%)は、空き家まで片道1時間を超える場所に住んでいます。

そして、遠いほど管理の回数は減ります。月1回以上管理している割合は、徒歩圏内なら81.4%ですが、片道3時間を超えると42.6%まで下がります。3時間超の空き家では、半数以上が「年に1〜数回」以下です。これは全国の数字ですが、雪で道が悪くなる冬は、さらに足が遠のくと考えられます。

管理の内容を見ても、「除排雪」を挙げた世帯は16.6%にとどまります。また、管理面の心配事として「地震・台風・豪雪などによる住宅の損壊・倒壊」を挙げた世帯は56.9%いる一方、「落雪による通行障害など」は2.2%でした。自分の家が壊れる心配はしても、屋根から落ちた雪が通行人や隣家に被害を与える場面までは、あまり想定されていないようです。

人が住んでいない家では、水道管の凍結にも注意が必要です。水抜きをしていないと、凍って破裂し、春に気づいたときには床や壁が水浸しということも起こりえます。

雪の放置は「管理不全空家」の判断材料に。税や賠償にも関わる

雪に関するトラブルは意外に発生します

空家等対策特別措置法のガイドラインには、「落雪による通行障害等」という判断基準があります。たとえば「通常の雪下ろしがされていない」「雪止めが壊れている」状態は、管理不全空家の例として挙げられています。状態が悪くなり、頻繁に落雪している、屋根に雪庇(せっぴ。屋根の端に張り出した雪のかたまり)ができて通行を妨げるおそれがある、といった場合は特定空家の例です。

前回の記事でも触れましたが、市町村から勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例(税金を軽くする仕組み)の対象から外れます。特定空家の場合は、命令や行政代執行に進むこともあり、その費用は所有者に請求されます。

さらにガイドラインは、老朽化した空き家が大雪の影響を受けやすい地域にある場合、悪影響が表に出る前の早い段階から措置を講じる必要性が高いとしています。雪国の空き家は、ほかの地域より早めに目をつけられやすいということです。

行政の対応とは別に、民法717条には「工作物責任」という決まりがあります。建物の管理に問題があって他人に損害を与えた場合、所有者が賠償責任を負うことがあるという内容です。屋根から落ちた雪が人に当たった、雪の重みで壊れた部分が隣の家を傷つけた、といったケースが考えられます。

雪国の空き家を守る手は大きく3つ

どれが正解かは、家との距離や家族の事情、建物の状態によって変わります。ただ、どの手を選ぶにしても、雪が降り始めてからでは動きにくくなります。

1つ目は、自分で管理することです。冬の前に、屋根材や雪止め、雨どいの傷みを確認し、水道の水抜きをしておきます。ただし、除雪作業中の事故が雪の死者の大半を占めることを考えると、慣れない人がひとりで屋根に上るのは避けるべきです。消防庁も、作業は2人以上で行い、命綱とヘルメットを着けるよう呼びかけています。

2つ目は、人に頼むことです。地元の雪下ろし業者や空き家管理サービス、近所の方に、冬の見回りと雪下ろしをお願いしておきます。自治体によっては、雪下ろしを頼める業者の名簿をつくったり、費用の一部を助成したりしています。「雪おろシグナル」で、空き家のある地域の雪の重さを遠くから確認するのも一つの方法です。

3つ目は、手放す・解体することです。毎冬の雪下ろし費用や見回りの手間を考えると、売却や解体を選ぶ家庭もあります。国の「空き家対策総合支援事業」には、積雪による倒壊を防ぐための空き家の除却を支援するメニューがあり、これを使って解体費を補助している自治体もあります。

同じ調査では、管理の頻度が「数年に1回」の空き家は33.3%に構造上の不具合が見られ、「ほぼ毎日」の15.3%の約2倍でした。決めないまま冬を何度か越すと、家の傷みが進み、売るにも貸すにも不利になりやすいのです。

まずは雪が降る前に、この冬の段取りを決めることから

・空き家のある市町村が豪雪地帯かどうか、雪下ろしの支援制度や解体補助があるかを調べる

・屋根・雪止め・雨どいの傷みと、水道の水抜きができているかを確認する(自分で行けない場合は地元の業者に依頼する)

・「冬の見回りと雪下ろしを誰に頼むか」を家族で決め、連絡先を共有しておく

・毎冬の費用と手間を書き出し、持ち続けるか、売る・解体するかを話し合うきっかけにする

雪国の空き家は、冬に一気にリスクが高まります。「春になったら考えよう」ではなく、雪が降る前の今が、いちばん動きやすい時期です。

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■出典

・国土交通省「豪雪地帯・特別豪雪地帯の指定(令和6年4月1日現在)」

 https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chisei/content/001584511.pdf

・国土交通省 国土政策局「豪雪地帯対策における施策の実施状況等」(令和7年2月)

 https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001864515.pdf

・総務省消防庁「今冬の雪による被害状況等(令和6年11月1日〜令和7年4月30日)」(2025年5月16日発表)

 https://www.fdma.go.jp/disaster/info/items/b4cba57c80f9175fe11556bf53f674613d39f36a.pdf

・総務省消防庁「今冬の雪による被害状況等(令和7年11月1日〜令和8年3月31日)」(2026年4月10日発表)

 https://www.fdma.go.jp/disaster/info/items/20260410setugai4.pdf

・総務省消防庁「命を守る除雪中の事故防止10箇条」(消防の動き 2020年12月号)

 https://www.fdma.go.jp/publication/ugoki/items/rei_0212_26.pdf

・国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」報告書(2025年8月29日公表)

 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001907491.pdf

・国土交通省「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)」

 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/002019841.pdf

・防災科学技術研究所「屋根に降り積もった雪」

 https://ftp.bosai.go.jp/seppyo/research/img/42_yaneyuki.pdf

・防災科学技術研究所「積雪時の雪下ろしの判断に役立つ『雪おろシグナル』の紹介」

 https://www.bosai.go.jp/seppyo/research/img/10_yukiorosignal.pdf

・民法(e-Gov法令検索)第717条

 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

※豪雪地帯の割合は特別豪雪地帯を含む。人口は令和2年国勢調査。

※雪による死者数は交通事故・転倒を含まない(除雪作業中のものは含む)。2014-15〜2023-24年は国土交通省資料(消防庁公表資料より作成)の値、2024-25年は4月30日まで、2025-26年は3月31日までの消防庁速報値で、今後変わることがあります。

※空き家所有者実態調査の数値は全国の集計で、雪国に限ったものではありません。管理頻度は管理者がいる空き家が対象です。

※管理不全空家・特定空家にあたるかどうかは、市町村が地域の実情に応じて判断します。雪下ろしの支援や解体補助の有無・条件は自治体ごとに異なるため、空き家のある市町村の窓口でご確認ください。賠償責任など個別の法的判断は、弁護士などの専門家にご相談ください。

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