相続した空き家、いつ売るのが得?築年数・特例の期限・成約が多い月を整理しました

前の記事では、空き家は持っているだけで年約23万〜39万円かかり、10年で230万円を超えるという試算を紹介しました。

では、売ると決めたとき、いつ売るのがいいのでしょうか。「もう少し落ち着いてから」「春になったら」と考えているうちに、気づけば数年たっていた、という話もよく聞きます。

この記事では、空き家を売るタイミングを「築年数」「税制の特例」「季節」の3つの軸から整理しました。

築年数:築30年を超えると、平均価格は約半分に

東日本不動産流通機構(レインズ)のデータで、首都圏の中古一戸建ての平均成約価格を築年数別に見ると、築5年以内は5,307万円、築30年超は2,891万円でした。築30年を超えると、築浅の家の約半分の水準です。

およそ30年で半額に

平均価格には立地や広さの違いも含まれるため、同じ家が年数だけでこれだけ下がるわけではありません。それでも、築年数が進むほど価格帯が下がっていく傾向ははっきり表れています。

一方で、明るいデータもあります。成約した一戸建てのうち、築30年超は33.6%と最も多く、約3件に1件を占めています。古い家でも、きちんと売れているということです。

古い家ほど、1年の差が状態の差になって表れやすくなります。前々回の記事で紹介したとおり、売却時の課題の1位は「住宅の傷み」でした。築年数そのものは止められませんが、傷みが進む前に売り出すことはできます。

税制の特例:期限から逆算する

相続した空き家を売るときに、税金の面でいちばん大きく影響するのが特例の期限です。

特例の期限

・空き家の3,000万円特別控除:相続した家を売ったとき、条件を満たせば売却益から最大3,000万円(相続人が3人以上なら2,000万円)を差し引けます。売却期限は「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日」まで。さらに制度そのものが2027年12月31日までの売却を対象としています。延長は要望されていますが、決まるまではこの日付が上限です。

・取得費加算の特例:相続税を納めた人は、相続税の一部を売却時の経費(取得費)に加えられます。期限は相続開始から3年10か月以内です。同じ売却で3,000万円控除とは併用できず、どちらかを選びます。

・相続登記の義務化:2024年4月1日から、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の登記が義務になりました。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。登記をしないと売ることもできないので、売却の準備としても早めに済ませておきたい手続きです。

たとえば2025年6月に相続した場合、3,000万円控除の本来の売却期限は2028年末ですが、現行制度のままなら2027年末が実際の期限になります。思っているより時間がない、という方も多いのではないでしょうか。

なお、3,000万円控除には、1981年5月31日以前に建てられた家であること、売却代金が1億円以下であることなどの条件があります。まずはご自身の家が対象になるかを確認してみてください。

もうひとつ、売却益にかかる税金は、持っていた期間が5年を超えるかどうかで税率が変わります(5年超は約20%、5年以下は約40%)。相続した家は、亡くなった方が持っていた期間を引き継ぐので、多くの場合は低い税率になります。「5年待ってから売る」必要はないケースがほとんどです。

季節:成約が最も多いのは3月

レインズの月別データでは、2025年に首都圏の中古一戸建ての成約が最も多かったのは3月の2,196件でした。最も少ない1月(1,279件)の約1.7倍です。2026年も3月が2,169件で、1〜3月の中で最多でした。

春は転勤や入学に合わせて住まいを探す人が増える時期です。また8月は1,611件と少なめで、夏休みやお盆の影響がうかがえます。

ただし、3月に成約するには、その前に査定や片付け、売り出しを済ませておく必要があります。春に売りたいなら、動き始めるのは前の年の秋です。

成約が多いのは3月

また、固定資産税はその年の1月1日時点の所有者にかかります。年内に引き渡しを終えれば、翌年分の納税通知は買主に届きます(売買では、その年の税額を日割りで精算するのが一般的です)。

ベストタイミングは「期限内・傷む前・春に向けて」

3つの軸を重ねると、空き家を売るベストタイミングは次のように整理できます。

秋に準備を始めて春に売るスケジュール

・税制の特例の期限内に売る(現行制度では2027年12月31日が一つの区切り)

・築年数や傷みが進む前に売り出す

・成約の多い春に向けて、秋から準備を始める

もちろん、家族の気持ちや家の事情によって、すぐには決められないこともあると思います。どれが正解かは家庭によって違います。ただ、特例の期限は待ってくれませんし、家の傷みも少しずつ進みます。「いつか」ではなく「いつまでに」を決めておくことが、結果的に選択肢を広げることにつながります。

まずは「期限」を書き出すことから

最初の一歩としておすすめなのは、次の4つを確認することです。

・相続した日を確認し、3,000万円控除や取得費加算の期限を書き出す

・登記簿や建築確認の書類で、家が建てられた年月を確認する(1981年5月31日以前かどうか)

・相続登記が済んでいるかを確認する

・春に売るなら、秋のうちに複数の不動産会社へ査定を依頼する

期限を紙に書き出すだけでも、「まだ大丈夫」なのか「そろそろ動くべき」なのかが見えてきます。

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■出典

・東日本不動産流通機構「首都圏中古マンション・中古戸建住宅 地域別・築年帯別成約状況【2026年01〜03月】」(2026年4月17日)

https://www.reins.or.jp/pdf/trend/rt/rt_202604_2.pdf

・東日本不動産流通機構「月例速報 Market Watch サマリーレポート 2026年3月度」(2025年3月〜2026年3月の月別成約件数)

https://www.reins.or.jp/pdf/trend/mw/mw_202603_summary.pdf

・東急リバブル「不動産マーケットレポート」2025年1月度(東日本不動産流通機構のデータ)

https://www.livable.co.jp/shiritai/column/fudosan-market-report/202501/

・国税庁 タックスアンサー No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm

・全日本不動産協会「相続した不動産を譲渡した場合の取得費の特例」

https://www.zennichi.or.jp/law_faq/%E7%9B%B8%E7%B6%9A%E3%81%97%E3%81%9F%E4%B8%8D%E5%8B%95%E7%94%A3%E3%82%92%E8%AD%B2%E6%B8%A1%E3%81%97%E3%81%9F%E5%A0%B4%E5%90%88%E3%81%AE%E5%8F%96%E5%BE%97%E8%B2%BB%E3%81%AE%E7%89%B9%E4%BE%8B/

・政府広報オンライン「相続登記の義務化」

https://www.gov-online.go.jp/newspaper/kijishita/202411/newspaper-1532.html

・新日本法規「相続した空き家、売却する前に確認を ― 3,000万円特別控除の現行制度と今後の改正動向」(2026年10月9日)

https://www.sn-hoki.co.jp/articles/article4915424/

・野村不動産ソリューションズ ノムコム「譲渡所得税(長期・短期の判定)」

https://www.nomu.com/tax/sell/joto.html

・静岡市「固定資産税・都市計画税・特別土地保有税の概要」(1月1日現在の所有者に課税)

https://www.city.shizuoka.lg.jp/s5724/s000546.html

※築年数別・月別のデータは首都圏(1都3県)の中古一戸建てです。地域によって傾向は異なります。

※平均成約価格には、立地や土地・建物の広さの違いも含まれます。

※税率は所得税・住民税・復興特別所得税を合わせた目安です。特例の適用には細かな条件があるため、税務署や税理士にご確認ください。

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